おもしろ発明ウェブログ

「はつめい」っておもしろい。「はつめい」って人をワクワクさせる。とある弁理士が気の向くままに綴るブログ。

親子発明へのいざない

2020年4月4日の土曜日、東京都では今日も外出自粛要請が出ています。これまで経験したことがない生活様式を余儀なくされ、私も含め、不安や戸惑いを隠せなくなってきている方が増えてきていると感じます。新型コロナへの対処をどうすべきか、私は専門家ではないため無責任なことは言えません。しかし、この与えられた条件で如何に有意義に過ごすかであれば、多少の提案ができると思ったので、このブログに示したいと思います。

 

それは「こんな時こそ、親子発明にチャレンジしてみましょう!」という話です。

 

【目次】

 

親子発明の意義

親子発明とは?

親子発明とは何か?辞書で引いてもまだ存在しない用語なので、先ずはそこから説明します。

 

私は親子発明を次のように定義しています。

 

最初に「発明」という言葉通り、「発明をすること」や「発明そのもの」を指します。それに「親子」という枕詞を添え、「親子で行う発明行為やそこから生まれた発明」を親子発明と呼びます。親子発明における親の最初の役目は、子供からアイデアが湧き出るように誘発したり、子供からアイデアを発掘することです。同様のことは現実の親子関係がなくてもできるかも知れません。例えば、お爺ちゃんお婆ちゃんと孫、ある程度年の離れた兄弟・姉妹などの関係です。言い換えれば、子供を手助けできる者が子供と協力しながら発明の創作活動を行うことです。もっと広く捉えれば、先生と生徒、同じ地域に住む大人と子供の間柄でも同様のことはできると思います。

 

ところで、「発明」とは何かを正確に知っていますか。よく耳にする言葉だと思いますが、実は正確な意味までは分からないという方がほとんどだと思います。特許法では、発明とは、‟自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの“と定義されています。しかし、その説明が加えられたところでも、やはりピンとこないという方が多い筈です。「発明」という言葉のように、知的財産の世界には沢山の専門用語が存在します。子供と取り組む親子発明の活動では、専門用語のような難しい表現の使用は極力避ける必要があります。発明が完成する仕組みやルールなどを子供に教えてあげるときは、子供が理解し易いように大人が翻訳して伝えてあげます。そして、子供には発明という特別な行為をしていると感じさせるのではなく、無意識のうちに発明をしている環境を作ってあげることが大事になります。

 

私は自分の子供に対し、「発明とは、こうなったらいいな、を本当の事にする具体的なヒラメキだよ」と教えています。さらに「‟こうなったらいいな“の反対は、身の周りの困っていること、不便なことだよ」、「‟具体的なヒラメキ”は、どうやったらその問題が無くなったり、解決できるかということだよ」という説明を加えています。そうです、もうお気付きだと思いますが、親子発明とはこうした親子の関わり方を根幹にした活動を言います。そして、その結果や派生物として、発明やビジネスが生まれることがあるのです。たとえ結果が出ないとしても、その活動の過程で親子が普段することのない体験ができます。また、親子で一緒に何かにチャレンジしたり夢を語り合ったりすることで親子の絆は深まります。そして気付けば、親と子の双方の人生を豊かにしていることでしょう。それが、私の思う親子発明です。

 

では一体、親子発明の具体的なメリットは何でしょうか?子と親で分けて、以下に述べたいと思います。

 

子にとってのメリット

親子発明には子供に与える2つのメリットがあります。それは子供たちが素直に喜べるものだと思います。

 

子供の頃から発明者になれる

一見、即物的なメリットに思えるかもしれませんが、とても奥深いことだと思います。親子発明を体験する子供は若くして発明者としての経験ができるのです。私の娘は8歳にして発明者になり、実際に特許証や特許公報で筆頭発明者として名を連ねております。本人は「私も発明者になったの?それって、すごいことなの?」と言う程度の理解ですが、彼女はその時点で世界の一流の研究者や技術者が歩んだのと同じように「発明者」の称号を手に入れています。もちろん、一流の研究者たちの発明と比べれば、そのレベルに大きな違いがあるかも知れません。しかし、研究者などが普段行う思考プロセスを、彼女も若くして味わったことは紛れも無い事実だと私は思います。

 

子供にとっては学校のクラスの友達などに「発明者になって特許出願したよ」、「特許庁の審査で権利が取れたよ」などと言えることが、ちょっとした自慢になるでしょう。また、夏休みの自由研究の成果として発表するのも良いかも知れません。それによりクラスで注目を浴びることが、彼らの自己承認欲求を満たし、自信にも繋がるでしょう。そんなのは単なる目先のメリットだと言われる方がいるかも知れませんが、そうだとしても彼らにとってマイナスとなる要素はない筈です。

 

子供の頃からビジネスに関われる

現在、私たち親子は、娘が中心になって開発した「組立式ハンガー」を世界に普及させる第一歩として、クラウドファンディングによって資金を集め、同ハンガー専門のオンラインショップを開業しようとしています。普通ならば、そうしたことは大人が中心になって進められます。しかし、娘は小学四年生にして、YouTubeでの商品説明動画に出演し、クラウドファンディングでも自らが広告塔のように活動報告を行い、現実的に営業活動を始めています。このことも子供にとっては「クラウドファンディングに挑戦したよ」、「YouTubeに出たよ」などと自慢できる程度の満足に繋がりますが、私から見れば、自分が同年代の時にそんな経験をしてこなかったので、娘がそうした活動の一環に身を置いていることがとても羨ましく思えます。

 

以上のように、学業以外でこうした経験ができることが、子供たちの職業観に影響を与えたり、世の中で勝ち残るのに必要なことを無意識に学ぶ機会となると考えます。少し硬い表現をすれば、親子発明を通じ、技術者、クリエーター、生産者、販売者、マーケッター、消費者など、経済活動の全般でモノを見る体験ができます。子供にとっては直ちに意味あるものとして受け止められないでしょうが、子供たちの真のメリットはそこにあると考えます。私の娘にも、将来、普通では味わうことができない沢山の経験をしたなと気付いてもらえると信じています。

 

親にとってのメリット

親にとっての親子発明のメリットが何か、私は3つ挙げたいと思います。

 

子供たちの斬新なアイデアに触れられる

以下は私が娘と親子発明をしている最中にあった実際の会話です。

 

私:なんか身近なところで‟こうなったらいいいな“って思うことはない?例えばさ、消しゴムのかすが無くなったらいいなぁ、とか??
娘:う~ん、遠くのものが取れる道具があったらいいなぁ・・そんな道具があったら動かなくていいし、楽ちんだよ。
私:例えば、磁石を使ったりすること?
娘:ううん。頭の中でこっちに来いって思ったら、モノがこっちに飛んでくるようなイメージ。
私:そうか・・超能力みたいだね・・・
娘:あと、話し相手が欲しい。勉強が分からない時に詳しく教えてくれたり、困っている時に相談相手になってくれるような相手だよ。
私:ロボットみたいなもの?それともSiriみたいな人工知能?やっぱりドラえもんとかペッパー君みたいなやつ?
娘:う~ん、‟今何時?“って聞くと教えてくれたり、‟歌うたって“ってお願いすると歌ってくれるやつが欲しい。あと、お母さんに怒られないようにアドバイスしてくれるロボットとか、人の気持ちが分かる、相手の心が読める道具が欲しいな。それからね、残金が分かる貯金箱!、お金を入れると‟残り何円です“って言ってくれるやつ!!・・・(後略)

 

この他愛もない会話ですが、私にとっては前半と後半のそれぞれで意外な展開に発展したというのが正直な感想となります。

 

先ず、前半の私の「‟こうなったらいいいな“って思うことはない?」という問いかけに対し、娘が「遠くのものが取れる道具があったらいいなぁ・・」と答えた点です。これを聞き、私の頭の中では「マジックハンド」のような道具をすぐさま思い浮かべました。その結果、私はまだ世の中に存在しないと一方的に考えた‟磁石を使った道具”を例示したのです。しかし、それに対する答えが意外だったのです。彼女は、「頭の中でこっちに来いって思ったら、モノがこっちに飛んでくるようなイメージ」と答えたのです。私は単に遠くのものを近くに呼び寄せる道具と捉えていたのですが、彼女の発想では、そうではなく、‟頭の中で描いたことが現実になる道具”という着想が先ず最初にあって、その具体例として、‟遠くのものを取るイメージをすれば、それが近くに届く道具“を導き出したのです。

 

また、後半の会話では、「話し相手が欲しい」という彼女の欲求から、「勉強が分からない時に教えて」、「相談相手が欲しい」、「歌ってくれるやつが欲しい」などと想像が広がり、挙句の果てには「お母さんに怒られないようにアドバイスをしてくれるロボット」だの「相手の心が読める道具」が欲しいなどと発散していました。

 

このように、子供にはちょっとした話の切り口を与えるだけでアイデアがあふれ出すのです。正直、頭の凝り固まった大人に比べ、子供の着想や発想力は豊かであると言わざるを得ません。また、「残金が分かる貯金箱、お金を入れると‟残り何円です“って言ってくれるやつ」はかなり具体的なアイデアだと思いませんか。アイデアの実現性は様々ですが、子供が生み出すアイデアの中には一般の家庭でも実現できるものが見つかるかもしれません。

 

子供と発明を行う際のアプローチには多少のコツはありますが、子供たちには身の周りの課題を見つけたり、それを解決する手段についてとても面白いアイデアを提供できる力があるのです。大人としては、子供たちのそうした能力に触れながら、一緒にアイデアを膨らます作業が楽しいと思います。

 

親子発明にもとづくビジネスチャンスを見つけられる

子供たちの斬新なアイデアに触れられながら会話を弾ませていくと、その中にビジネスの種が存在しているかも知れません。私たち親子の場合は、発明品そのものが「組立式ハンガー」という物品でしたので、それを販売するビジネスを思い浮かべました。自分たちで企業に発明品を売り込むことや、会社を立ち上げてそのハンガーを製造・販売するとなると、それは簡単ではないと思います。一方で現在は、クラウドファンディングでプロジェクトを立ち上げ、協力者を募るやり方も流行っています。ですので、今の時代、事業化のハードルはそれほど高くないと私は思っています。親にとって、親子発明が新しい事業を開始するきっかけになるかも知れません。土日しか時間がないのであれば、親子で週末起業や副業を始めてみるのもよいかも知れません。そのように親子発明で何かの発明を完成させた暁には、自分たちの人生を左右する次のステージが待っている・・と考えるとワクワクしますよね。そう、それが親にとっての親子発明の醍醐味だと私は思っています。

 

親子一緒の時間を楽しめ、親子の絆を深められる

冒頭でも述べましたが、何より、親子発明という親子の取り組み自体、子供の教育の場、親子のコミュニケーションの場となり親子の絆を深めるのに役立つことでしょう。私たち親子に関して言えば、親子発明を通じ、娘には日常の課題を見つけてはそれを解決するアイデアを出す習慣がついたようです。娘の考えていることは些細なことですが、私には彼女が日々やってることが私が務める会社の研究者や技術者たちが普段やっている活動と本質的には同じように思えます。彼女にとっては、何か課題を見つけては解決手段を考える、という大人になっても必要なスキルを磨く良い訓練になっていると思います。もちろん、親子で接する時間も増えました。親子で一緒に発明をしたり、家族で何か新しいビジネスを始めようとしたことが、彼女の記憶に残り、今後の親子関係をより良いものにしてくれる筈だと私は信じております。

 

親子発明をはじめてみよう!

少し子供の発明について語ります。ジェームズ・ワットの蒸気機関やトーマス・エジソンの白熱電球など、発明とは古くから産業の発達に寄与して経済活動に直結するものでした。第四次産業革命と言われる現代においても、ロボット、人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)など多岐に渡る領域で技術革新が進行しており、その中で数多くの発明が生まれています。

 

では、その立役者と言える発明者は一体誰でしょうか。大部分の特許出願が企業や大学からされていることを踏まえれば、ほとんどの発明者は大人だと言えます。ごく稀に小学生の発明がテレビのニュースなどで取り上げられたりします。少し前に、磁石を利用してアルミ缶とスチール缶を分別できるゴミ箱を発明した少女が話題になっていました。私の趣味の一つは特許出願された子供たちの発明を調べることであり、その子供たちを見ていると二つの共通点があることに気付きました。

 

一つ目の共通点は、彼らの生み出す発明品が生活に結び付く身近なものであり、原理もシンプルで原始的であるという点です。例えば、小学生の男子が生み出した「折り畳み式歯ブラシ」という発明があります。これは、二つに折り畳むことが可能な歯ブラシで、その状態でギュッと握ると歯ブラシの柄の部分にセットされた歯磨剤チューブからブラシ部に歯磨剤が塗布されるという発明です。

 

子供たちは大学や企業のように高度な実験を行う訳ではありません。その結果、シンプルな発明になるのは当然のことです。ただ、そうかと言って彼らの発明の発明性が否定されるというものでもありません。むしろ彼らの発明は特許の審査を通過し、れっきとした特許発明として認められているのです。このことは、大学や企業の研究室のような環境が無くても発明はできる、つまり、家庭内など、発明はどこでもできる、ということを証明してくれています。

 

二つ目の共通点は、彼らの身近に知的財産に造詣が深い人やその世界の専門家がいるということです。前述の空き缶を分別できるゴミ箱を発明した少女は、父親が発明家であることがテレビで知られています。また、「折り畳み式歯ブラシ」の発明をした少年のケースでも、父親が知的財産の専門家・弁理士です。その方が代理人となって自分の子供の発明を特許出願して特許権を取得されています。私は企業の研究開発に約10年間従事した後、知財部で10年以上特許を扱う企業内弁理士です。会社では日々研究員の発明を扱う立場です。私たち親子においても、私が家庭内で娘の発明や特許出願をサポートし、発明「組立式ハンガー」の完成と特許権の取得を果たしました。以上の裏を返せば、子供たちには発明を生みだす力がある。しかし、周囲に知的財産の知識を持った大人がいなければ、その子供たちからは発明が発掘されない、もしくは発明が生まれたとしても世に出ないまま埋もれてしまう、という悲しい現実を示しています。

 

皆さんは、いわゆる「町の発明教室」をご存知でしょうか?私の知る限り、参加者の中心は大人たちです。一部で子供を対象にした教室も存在しますが、インターネット検索でもいいので発明教室の光景を覗いて見てください。そのとき一般の発明教室の参加者のほとんどが高齢者であることにお気付きになるでしょう。この方たちは全員が生き生きとされており、発明に生きがいを感じているような方ばかりです。私は知的財産を扱うことを生業にしているので、そんな発明ライフを満喫する高齢者を目の当たりにして少し憧れます。しかしその一方で、そうした光景を目にしたときに正直ゾッとする自分もいます。それは個人の発明家というジャンルでも高齢化が進んでいると感じたからです。日本の産業発達の根幹とも言える発明創作活動に子供たちがほとんど関わっていない現状は、残念ながら、将来その活動の主役を担う子供たちの訓練が全くできていないということに他なりません。

 

そんなことで良いでしょうか?子供たちは将来の日本の技術競争力の源泉。良い訳はありませんよね。決して、大人と張り合って子供に発明をして欲しいと言っているつもりはありません。子供たちには、ただ発明という活動に早い段階から触れ、身近なものとして捉えて欲しいだけです。残念ながら、現状ではそうした機会が一部の限られた子供にしか与えられていないと言わざるをえません。そして、そのことが日本の競争力の阻害要因になっていると私は考えています。

 

では一体どうしたらよいでしょう。先ずは学校教育の場で発明の機会を増やす、という方法が考えられます。しかし、子供にとっては最も身近な環境、日常生活の中で自然と発明という知的活動に身を置くことができるのが一番楽で効果的だと思います。そして、その環境を作るのには親の協力が必要です。さあ、親の出番です。お父さん方、お母さん方、一緒に日本の技術・経済の発展のために一肌脱ぎましょう!親子発明を推進しようではないでしょうか!と、そんな偉そうなことは言えませんが、親子発明の協力者になられた親には沢山のメリットがあります。それはこれまで述べたとおりです(親子発明の概念は下図を参照)。

 

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日本の発展はさて置き、この記事をここまで読んでくれた親御さんがいらっしゃれば、ぜひご自身やお子さんの将来が明るくなる、親子関係も良くなるぐらいの軽い気持ちで親子発明を始めてみることをオススメします。繰り返しになりますが、親子発明にはそのぐらいの力はありますので。

 

 

まとめ

 

この機に親子発明の世界に足を一歩踏み入れてもらうのが良いと思います。

 

親子発明は単に発明を生み出すという行為だけを指すのではありません。親子発明には、親子双方にとって人生を豊かにする力があります。そして、その過程で親子の繋がりや絆にも変化を与えます。

 

なお、親子発明の各ステップにはコツがあります。ですが、その術を習得することは難しくありません。また機会があれば、私たち親子の事例からご説明など差し上げたいと思います。

 

この記事を読んでくれた方の一部でも、親子発明の世界に興味をもってくれたら幸いです。

 

 

※「私たち親子の特許出願」これまでの記事はこちら ↓
https://www.omoro-invention.com/archive/category/私たち親子の特許出願

 

※「発明の商品化」これまでの記事はこちら ↓
https://www.omoro-invention.com/archive/category/発明の商品化