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【発明紹介-018】ゾッとする発明・・

今日は弁理士の私が思わずゾッとしてしまった発明を紹介します。

 

目次:

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はじめに

私は企業の知財部で働くサラリーマン。簡単に言えば、日々、研究員の研究成果に触れては特許性や価値を評価し、知財の保護・活用のために戦略的な特許出願を行うことを仕事の一部にしています。弁理士という資格を有し、これは知財の専門家としての証でもありますが、知財を扱うことを生業にしてます。

 

そんな私ですが、知財パーソンの仕事の一部が少しずつ人工知能(AI: artificial intelligence)に置き換わっていくのだなあと肌で感じる発明がありましたので、ここに記したいと思います。

 

発明紹介

発明の名称は「特許要件適否予測装置および特許要件適否予測プログラム」。特許第6232607号です。請求項1 は以下 ↓

【請求項1】
  先行技術調査の対象である調査対象発明の検索に用いられる検索文書を用いて、公開特許公報の電子データである公開公報データを検索し、該検索結果に応じて、前記調査対象発明の新規性の要件適否を示す新規性予測データを生成する新規性予測処理部と、前記調査対象発明の進歩性の要件適否を示す進歩性予測データを生成する進歩性予測処理部と、該新規性予測データおよび進歩性予測データを用いて前記調査対象発明の特許要件適否を示す予測結果ファイルを生成する予測結果ファイル生成部とを有する特許要件適否予測処理手段を有し、
  前記進歩性予測処理部は、前記公開公報データによって特定される先行技術発明のうち、前記調査対象発明に最も近い主引用発明を検索する主引用発明検索部と、文書ベクトルの分類を行う文書分類部とを有し、
  前記主引用発明検索部は、前記検索文書を用いて前記主引用発明を検索する主検索文書データを生成し、該主検索文書データを用いて前記公開公報データを対象とする概念検索を行い、該概念検索の結果、類似度の降順に該類似度が最も高い最類似文献を含む複数の類似文献を抽出し、かつ前記検索文書から生成される全文検索タームを用いた前記公開公報データを対象とする全文検索でヒットしたヒット文献に前記複数の類似文献と一致する類似ヒット文献があったときは、該類似ヒット文献のうちの前記類似度が最も高い最類似ヒット文献を前記主引用発明が開示されている主引用文献とし、
  前記文書分類部は、学習文書ベクトルと教師ベクトルとを含む複数の訓練データを用いた機械学習によって、入力される発明移動ベクトルを進歩性の要件に適合するか否かのいずれかに分類してその分類結果に応じた要件適否文書ベクトルを出力するように構築され、該発明移動ベクトルは、前記検索文書に応じた調査対象発明ベクトルと、前記最類似ヒット文献に応じた引用候補ベクトルとの差分に応じたベクトルである特許要件適否予測装置。

 

 発明の効果は以下 ↓

【発明の効果】
【0019】
  以上詳述したように、本発明によれば、出願書類の準備負担軽減が有効になるように、調査対象発明について、審査実務に適合した内容の特許要件の適否に関する予測が行われ、しかも予測の精度が高められるようにした特許要件適否予測装置および特許要件適否予測プログラムが得られる。

 

この発明を一言で表せば、発明の特許性評価をAIを用いて行うというもの。実現性や精度には疑問を持ちますが、だとしても技術の進歩を考えればその解消は時間の問題です。

 

この特許はビジネスモデル特許です。知財の世界にいるものであれば一見誰しもが思い描けそうにも思えます。ですが、それを活字に起こし、特許明細書に記載して特許にしてしまったのです。権利が認められた範囲において、他者は同様のことをできなくなったということです(AIを使用しない従来のやり方は勿論問題ない)。

 

おわりに

今回紹介した発明の発明者、出願人、権利者、代理人は全て同一人物です。そして、発明者の居所にはその人物の苗字がついた特許事務所名が記されておりました。つまり、特許事務所の所長自らがこの発明をし、代理人となって特許出願をして権利化を図り、権利者になったということです。

 

表題のとおり、私が少しおぞましく思ってしまったのには訳が二つあります。一つは自分の仕事領域の一部がAIに置き換わる現実を目の当たりにしたこと。もう一つは同業者の他の弁理士、しかも特許事務所の所長が自己の業務に関するAI化技術を特許出願して権利化してしまった、ということ。前者については、知財の世界のみならず、もっと単純な事務系業務ではAIの出番もなく単純機械化されていく潮流なので、どんどんAI等を活用していけば良いと思います。一方、後者の特許事務所の所長自身がこの技術を特許権化している事実は私にとって衝撃です。知財サービスの提供者がAI技術をユーザーとして取り入れて活用するのではなく、技術思想そのものを権利化してしまったからです。

 

権利化の意図は二つ考えられます。一面はその技術を独占するという意思表示であり、今後技術開発したり、他者にライセンスして技術開発させる動きなのかも知れません。半面、今回の特許権を防衛特許として、特許性判断のAI化を阻止しようという動きにも読むことが可能です。どちらが正しいかは分かりませんし、どちらを選択するかも権利者の自由ですが、権利者にとってはその選択肢を得ることが目的なのかも知れません。ただ、こうした動きを特許事務所の所長が起こしたことが私にとっては驚きだったのです。

 

また、当該特許事務所にとってはこの特許権の成立や保有が宣伝材料になるので、それだけでも価値があるのかも知れません。業務効率化のみならず他の特許事務所との差別化ができるからです。

 

なお、審査経過を見ると、この発明の特許出願は早期審査を請求していました。その後は特許庁からの拒絶理由通知を受けることなく特許査定されていました。いわゆる一発登録です。この辺りは、さすが弁理士の立ち回りというところでしょうか。

 

ではこの辺で。