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【発明紹介-017】日能研の発明

目次:

 

はじめに

今日も “おもしろ発明” を一つ紹介させてもらいます。ネタはなかなか尽きず、むしろこの正月休みの間にもストックが増えておりますので、新春大放出ではないですが、暫く発明紹介が続きます。お許しください。

 

一方、そろそろ私たち親子の特許出願の進展を知りたいと思う読者がおられるかも知れません(ゼロかも知れませんが笑)。年末にも書きましたが、まだ特許庁の審査に動きはなく、進展があり次第に記事にさせてもらう予定です。こればっかりはコントロールできないので、もう少しお待ちください。

 

発明紹介

さて、本日紹介する発明は日能研の発明です。 日能研と言えば、神奈川に本拠地を置く、進学塾・予備校です。私は神奈川育ちなのでよく知っていますが、自分の小学時代は、中学受験を目指す子供たちがこぞって日能研バッグ(背中にNの文字入り)を背負い同塾に通っていた印象があります。

 

そうした塾が「答案の採点を支援するコンピュータシステムおよびプログラム」という名称の発明について特許出願し、特許第6355279号として特許権が認められています。

 

登録となった請求項1(権利範囲の一つ)は以下です(下線は審査過程で補正された箇所) ↓

【請求項1】
  答案の採点を支援するコンピュータシステムであって、前記コンピュータシステムは、
インターフェース部と、プロセッサ部とを備え、前記コンピュータシステムは、データベース部に接続されており、前記プロセッサ部は、
 
前記インターフェース部を介して、受験者の解答が正答であるか誤答であるかの採点者による判断を示す情報を受信することと
 
前記インターフェース部を介して、受験者の解答が正答であるか誤答であるかの判断をしないという採点者による一時的な判断を示す情報を受信することであって、前記一時的な判断を示す情報は、前記解答に対するコメント付与を要求するとの判断を示す情報を含む、ことと、
 
前記判断を示す情報および前記一時的な判断を示す情報を前記データベース部に格納することと、
 
前記解答に対するコメント付与を要求するとの判断を示す情報に基づいて、前記コメント付与を要求するとの判断を前記採点者がした解答を前記データベース部から抽出することと、
 
前記インターフェース部を介して、前記抽出された解答に対するコメントを受信することと
 
を行うように構成されている、コンピュータシステム。

 

テストの答案の採点を支援するコンピュータシステムに関するものですが、要はビジネスモデル特許です。

 

この発明が解決しようとする課題は以下です ↓

【発明が解決しようとする課題】
【0004】
  本発明は、採点時の効率向上と採点時の学びの品質向上とを両立させることを可能にするコンピュータシステムおよびプログラムを提供することを目的とする。

 

ここで一瞬、ん、となりました。課題が二つあり、一つはテストの「採点時の効率向上」、二つ目は「採点時の学びの品質向上」(赤字で強調)と書かれています。この「採点時の学びの品質向上」とは一体何? その点は、明細書に以下の記載がありました ↓

  【0021】
  採点者は、
採点中に、受験者の解答が正答(○)であるか誤答(×)であるかという正誤の判断に迷う場合がある。このような場合に、採点者が正誤の判断に迷って考え込んでしまうと、採点が中断されるため、採点の効率を悪化させてしまう。しかしながら、本発明の発明者は、採点者が正誤の判断に迷うことは「悪」ではなく、むしろ「善」であると考えた。採点者が正誤の判断に迷うことはその採点者が無能であることを示すものではなく、むしろその採点者の能力の高さを示すものであり、そのような迷いを大切にすることこそが採点者の能力を向上させることに資することであり、ひいては採点時の学びの品質の向上につながると考えたのである。本発明の発明者には、正誤の判断に迷うことなく採点効率至上主義で採点を行う者は信用できないという思いもあった。そこで、本発明の発明者は、「正誤の判断に迷う」採点者の能力を生かしつつ、採点時の効率向上と採点時の学びの品質向上とを両立させることを可能にするシステムを発明したのである。
【0022】
  本発明のシステムでは、採点者は、受験者の解答が正答(○)であるか誤答(×)であるかという正誤の判断に迷った場合には、「採点保留」をすることが可能である。「採点保留」とは、即座に正誤の判断をすることができないとして正誤の判断を保留することである。このことは、例えば、採点者が「採点保留」した解答に対して「採点保留フラグ」を付与することによって達成される。
【0023】
  本発明のシステムによれば、採点者は、正誤の判断に迷った場合には「採点保留」をすることにより、採点を中断することなく、次の解答の採点に進むことが可能である。これにより、採点時の効率が向上する。「採点保留」をされた解答は、ステップS105において、採点後処理される。採点後処理では、「採点保留」された解答は、「採点保留」をした採点者とは異なる採点者(例えば、上級の採点者)によって採点されることが可能である。このように、「採点保留」をした採点者とは異なる採点者(例えば、上級の採点者)が、「採点保留」をされた解答が正答(○)であるか誤答(×)であるかを最終的に判断することにより、適切な採点を行うことが可能である。その結果、採点の品質が維持され、ひいてはテストの品質が維持される。さらに、このような最終的な判断は、「採点保留」をした採点者にフィードバックされる。これにより、「採点保留」をした採点者は、自分以外の採点者がどのような最終判断をしたのかを学習することが可能であり、自分の採点の品質を向上させる機会が与えられる。このようにして、本発明のシステムによれば、採点時の効率向上と採点時の学びの品質向上とを両立することが可能である。

 

上記の赤字部分を読めば、技術思想をおおよそ理解できると思います。

 

ポイントは、

①テストの採点者が正誤判断に迷ったときに採点者はその解答に対する採点を保留 ⇒ 採点を中断しない形になるので効率が上がる。

②採点保留された解答は異なる採点者に回されて最終判断 ⇒ 最終判断結果が一次採点者にフィードバックされ、当該採点者はその結果を学習でき、全体としても採点の品質が上がる。

ということだと思われます。

 

こうした操作や方法は、通常の塾の採点業務の中で行われているように思われますが、これをシステムを用いて体現したことで特許が認められたケースと言えます。

 

なお、審査経過を見たところ当初の請求項1は以下でした ↓ 

【請求項1】
  答案の採点を支援するコンピュータシステムであって、前記コンピュータシステムは、
  受験者の解答が正答であるか誤答であるかの判断を採点者が行うことを可能にする手段と、
  受験者の解答が正答であるか誤答であるかの判断をしないという一時的な判断を採点者が行うことを可能にする手段と
  を含む、コンピュータシステム。

 

さすがに審査官からは、以下の拒絶理由を受けていました ↓

請求項1に記載された「受験者の解答が正答であるか誤答であるかの判断を採点者が行うことを可能にする手段」、「受験者の解答が正答であるか誤答であるかの判断をしないという一時的な判断を採点者が行うことを可能にする手段」は、コンピュータが果たすべき業務上の機能を単に特定するに留まり、該機能を果たすためにコンピュータのハードウェア資源を具体的にどのように用いて実現したのかがなんら記載されていないから、自然法則を利用した技術的思想の創作とは言えず、特許法第2条でいう「発明」に該当しないものである。

 

この他、発明の新規性・進歩性を否定する拒絶理由もありましたが、これを受け、出願人は上記請求項に補正するとともに、以下の反論を行って権利が認められておりました。

補正後の請求項1に係る発明によれば、採点者は「コメント要求フラグ」を入力することで、コメント付与のための採点を中断することなく次の解答の採点に進むことが可能であり、これにより、採点時の効率を向上させることが可能である点で有利です(中略)。さらに、採点者が採点後に冷静にコメントを付与できる、あるいは、別の採点者がコメントを付与できるため、採点・コメントの品質が維持され、ひいてはテストの品質が維持されるという点でも有利です(本願明細書の段落0023等を参照)。この有利な点は、引用文献1~3によって達成可能ではありません。

 

以下、このシステムのワークフローと採点者端末装置に関する図を張り付けておきます。この採点システムの具体的なイメージが掴めるかと思います ↓

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おわりに

今回は学習塾で生まれたビジネスモデル特許を紹介させていただきました。テストの採点現場に潜んでいた課題に着目し、その解決手段をICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)と結合させることで特許発明として完成させた例となります。世の中にはこのような発明がまだまだ存在しています。また、こうした発想(ビジネスの方法+ICT)を持つことができれば、比較的容易にビジネスモデル特許を生み出すことが可能なのではないでしょうか。

 

ではこの辺で。