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新年のごあいさつ
明けましておめでとうございます。今年もこのブログに「おもしろ発明」に纏わる話を綴っていきます。どうぞよろしくお願いします。
さて、早速の2019年第一弾ですが、ビジネスモデル特許を一つ紹介します。またですか?と言われそうですが、最近はこの類いの発明がもっぱら私の好物となっています。
こんな感じで今年もスタートです。
発明紹介
発明の名称は「植物の健康診断システム」というもの。特許番号は第6307680号です。今回も要約や代表的な図などを抄録として引用させて頂きます 。
先ずは要約。植物の“健康診断”の存在には少々驚かされましたが、書いてある内容は難しくないので、皆さん読めば理解できると思います ↓
【要約】
【課題】
植物の様々な健康状態を簡単かつ適切に把握することのできる、植物の健康診断システムを提供すること。
【解決手段】
植物を撮影した画像から健康状態の診断を行う、植物の健康診断システムであって、学習対象とする植物の画像である学習対象画像と、学習対象画像の撮影時点での学習対象の健康状態と、を参照し、診断対象とする植物の画像から当該植物の健康状態の診断方法を学習する学習手段105と、診断対象である植物を撮影した診断対象画像の入力を受け付け、診断方法に基づいた診断対象の健康状態の診断結果を出力する診断手段107と、を備えることを特徴とする。
請求項1(権利範囲の1つ目)は以下です。下線部は審査の過程で補正された箇所です ↓
【請求項1】
植物を撮影した画像から健康状態の診断を行う、植物の健康診断システムであって、
学習対象とする植物の画像である学習対象画像と、前記学習対象画像の撮影時点での前記学習対象の健康状態と、を参照し、診断対象とする植物の画像からの当該植物の健康状態の診断方法を学習する学習手段と、
診断対象である植物を撮影した診断対象画像の入力を受け付け、前記診断方法に基づいた前記診断対象の健康状態の診断結果を出力する診断手段と、を備え、
前記学習対象画像が少なくとも前記学習対象の葉脈を撮影した画像を含み、
前記学習手段が、前記学習対象の葉脈の形態に基づいた前記診断方法の学習を行い、
前記診断対象画像が少なくとも前記診断対象の葉脈を撮影した画像を含み、
前記診断手段が、前記診断対象の葉脈の形態に基づいた前記診断結果を出力し、
前記学習対象の葉脈の形態及び前記診断対象の葉脈の形態が、少なくとも、葉脈の太さと、葉脈の連続性の内の1つ以上を含むことを特徴とする、植物の健康診断システム。
赤字で強調しましたが、この発明の構成は「植物の健康状態の診断方法を学習する学習手段」と「診断対象の健康状態の診断結果を出力する診断手段」を備えた「植物の健康診断システム」となります。
また、前者の構成については、段落【0015】に以下の記載があります ↓
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記学習手段が、機械学習を行うことを特徴とする。
このように、診断方法の学習に機械学習を用いることで、診断方法の学習を効果的に行うことができる。
つまり、植物の健康状態の診断方法に関する学習手段としては、今流行りの人工知能(AI: Artificial Intelligence)が使用されるということですね。
図を見ると、この発明の概略を掴むことができます。AIによる機械学習に必要な各種情報を取得した後に機械学習を行わせ、そこから導き出された診断手段を用いて診断対象の植物の健康診断を行い、診断結果を出力するという流れです ↓
おそらくAIに機械学習させるためのアルゴリズムの構築や教師データの整備などには発明者の工夫が施され、また、明細書には書かれていないノウハウも含まれているのだと推察します。一方、発明として上記請求項に表現されたワークフローは至ってシンプルであり、これも所謂ビジネスモデル特許の範疇です。
おもしろいですね。
おわりに
この発明の発明者について少しググってみました。発明者および権利者は、農業法人の最高技術責任者として「奇跡のバナナ」なるものを取り扱っている農業家でありました↓
www.kisekino-banana.com
この方の他の発明も検索してみましたところ、「植物の特性を増強する方法」という発明も特許出願されていました(特許第6300215号)。上記リンク先でも「凍結解凍覚醒法」として紹介されている技術です。それは植物の栽培方法に関するものであり、いかにも農業家らしい発明と言えます。一方、今回紹介した同氏の発明はビジネスモデル特許なんですよね。農業家もいよいよビジネスモデル特許を出願する時代になったということです。
以上、私が気づきを得た発明を紹介させてもらいました。
最後に、このブログで紹介する発明には、通し番号を付けることにしました。年明けで区切りが良いので、今日からタイトル表示しています。発明者の方には称号として捉えてもらえたら嬉しいです。
ではこの辺で。