今日はこんなものも特許になるのかあという話。
特許第5946491号。
権利者 株式会社ペッパーフードサービス。
発明の内容は同社のニュースリリースに分かりやすく記載されていましたので、そちらを抄録として引用させてもらいます ↓
特許を取得しましたシステム(但し、⑤,⑥の構成は後の訂正請求で付加)は、
① お客様を立食形式のテーブルに案内するステップ、お客様からステーキの量を伺うステップ、伺ったステーキの量を肉のブロックからカットするステップ、カットした肉を焼くステップ、焼いた肉をお客様のテーブルまで運ぶステップを含む ステーキの提供方法を実施するステーキの提供システムであって、② 上記お客様を案内したテーブル番号が記載された「札」と、
③ 上記お客様の要望に応じてカットした肉を計量する「計量機」と、
④ 上記お客様の要望に応じてカットした肉を他のお客様のものと区別する「印し」とを備え、
⑤ 上記「計量機」が計量した肉の量と上記「札」に記載されたテーブル番号を記載した「シール」を出力することと、
⑥ 上記「印し」が上記「計量機」が出力した肉の量とテーブル番号が記載された 「シール」であることを特徴とします。
ニュースリリースを直接見たい方はこちら ↓
https://www.pepper-fs.co.jp/_img/news/pdf/2018/20181109.pdf
発明の名称は「ステーキの提供システム」。
文字どおり、同社のサービスを単に表現しただけのようなもの。
特許の図面にはこんなものも含まれます ↓
当初この発明は上記①~④のみを構成要件として特許されておりました。ただ、これらは単なる人為的取り決めなので発明ではない的な理由で第三者から異議が申し立てられ、その後、⑤と⑥の要件が追加(訂正請求)されたようです。その後、特許庁は特許の取消決定を下し(異議理由や取消決定の内容は詳しくみていません。私の認識に間違いがありましても、どうか悪しからず。)、それを不服としたペッパーフードサービス社は知財高裁に訴えを起こし、その結果、前記取消決定を取り消す判決がされ、その後の上告もなかったので、同判決が確定、この特許権が維持されたという流れがありました。
驚きであったのが、この発明には「お客様を・・・案内するステップ」、「ステーキの量を伺うステップ」、「肉のブロックからカットするステップ」、「肉を・・・運ぶステップ」等々の人の手を介したステップが含まれていること。通常の特許実務ではこうした表現は避けるものです。なぜなら、そうしたステップのみで構成された発明は発明該当性が認められなかったり(単なる人為的な取り決めでしょ、として)、また、表現自体も不明瞭になりがちなので記載要件に違反することがあるからです。
ですが、こうしたステップを表現して特許請求の範囲に取り入れること自体は問題にならないということですので、今後の参考にします。
ところで、私も特許庁が特許を認めないとする行政処分に対して、一度だけ不服の訴えを知財高裁に提起して争った経験があります(争点は発明進歩性、結果は勝訴)。裁判に勝てるかどうかの確かな自信を持てなかったケースでしたが、会社にとっての重要技術で多少の無理があっても前に進まなくてはならなかったという状況でした。今回紹介したこのケースも同じに思えますが、知財担当者や代理人の心労は相当なものであったとお察しします。
と、少し感情移入してしまいましたが、結果としては特許権が認められた形。めでたし、めでたし、ではないかと思います。おめでとうございます。
一方、ビジネスモデル特許など、いろんなサービスに特許権が付与される時代になってます。何かビジネスをはじめる時は、そうした特許権があることを意識しなければなりません。