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【発明紹介-013】堀江 貴文 氏(ホリエモン)の発明

今日はホリエモンこと堀江貴文氏の発明を紹介します。

 

目次:

 

はじめに

言うまでもなく絶大な影響力を持っている彼、今年のはじめに私は彼の著書「好きなことだけで生きていく。」を読みました。それ以降、私はタイトルに示される彼の生き方に素直に憧れを抱いた訳ですが、それよりも何よりも、彼が発明者として特許出願しているならば、それが何かが気になってしまいました。ということで今回、特許調査をおこない、発明者・堀江貴文の特許出願を見つけることができたので、ここに書き留めたいと思います。

 

ホリエモンの発明

堀江氏が発明者である特許出願は2件ありました。発明の名称はいずれも「インターネットを用いた広告システム及び広告方法」であり、2000年3月に出願されていました。出願人は彼が設立した株式会社オン・ザ・エッヂです。同社は2000年4月に東証マザーズに上場、その後、2002年に経営破綻した旧ライブドア社から営業権を取得し、ライブドアに社名を変更、そして、2006年に証券取引法違反により上場廃止となっています。同社はインターネットが普及しはじめた黎明期に、いち早くホームページの制作・管理運営を行う会社として注目を集めたということですので、この発明の名称を見るだけでも、会社が急拡大していこうという時期に堀江氏自らが次のビジネスの種になる発明をして、独占排他権を取得しようとしていたことを物語っております。

 

今日は特許出願された2件の発明のうちの一つを紹介したいと思います。

 

特願2000-136481

まず、堀江氏の発明に関する従来技術、彼が解決しようとした課題、そして、その課題の解決手段について、特許明細書では以下のように記載されています ↓

【0002】

【従来の技術】何らかのホームページ(ウェブページ)を閲覧しようとする閲覧者は、まず、インターネットに接続された閲覧者端末を操作して閲覧しようとするホームページの識別子を指定する。ここで、指定された識別子に対応するホームページ(ファイル)が不存在の場合に、当該閲覧者端末の端末画面上にファイルの不存在を示すエラー画面が表示される。このエラー画面は、たとえば、閲覧者端末側で動作するブラウザやウェブサーバに格納されているエラー情報に基づいて表示されるようになっている。

【0003】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このエラー画面は、ブラウザの種類やウェブサーバの管理者の好み等によってエラーメッセージの内容や画面の色彩が異なることはあっても、指定した識別子に対応するホームページの不存在又は識別子の指定に誤りがあったことを閲覧者に認識させるだけの無味乾燥なものでしかなかった。この点に着目した発明者は、このエラー画面を、単なるエラーメッセージの媒体としての機能させるだけでなく、閲覧者に対して新たな情報を与える媒体として利用することを思いついた。

【0004】

【課題を解決するための手段】上述した認識を持った発明者は、エラー画面を広告媒体として捉えた。そのようにすることによって、閲覧者はたまたま表示されたエラー画面上の広告から新たな情報を入手することができるからである。また、当該広告の広告主にすれば新たな広告の機会を得ることができることにもなる。本発明は、そのような観点からなされたものである。その詳しい内容については、項を改めて説明する。なお、何れかの請求項の発明を説明するに当たって行う用語の定義等は、その性質上可能な範囲において他の請求項の発明にも適用されるものとする。

 

つまり、この発明はインターネットを利用した広告システムに関するものであり、詳しくは、アクセスしたファイルが存在しない場合に、それを示すエラー画面を利用した広告システムや広告方法を提供しようというものです。【0003】にも明記されていますが、発明者・堀江貴文は「エラー画面を単なるエラーメッセージの媒体として機能させるだけではなく、閲覧者に対して新たな情報を与える媒体として利用することを思いついた。」とあり、彼はそこにビジネスチャンスを見出したことが伺えます。

 

以下に図も貼り付けておきます ↓

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アクセス不能を示すエラー画面には広告が表示されています(右側)↓

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審査経過

こうしたシステムについて、彼の会社が特許権を取得できていれば、同社はこの発明を独占的に実施できる立場になっておりました。しかし、この特許出願は拒絶査定を受けていました。ここで私が着目したいのは、拒絶査定される前に発送された拒絶理由通知書です。以下はJ-PlatPatで確認した審査記録です ↓

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赤枠で囲みましたが、その拒絶理由の根拠条文として“第29条柱書”と記されております。これが意味するところは、特許庁の審査官が「特許法第29条第1項柱書に違反しているから特許権は与えないよ」と認定したということです。残念ながら、J-PlatPatで審査書類を閲覧できるのが2003年以降の書類であるため、私はこの出願の審査書類までを精査していませんが、以下のように考察します。

 

特許法第29条第1項柱書違反についての考察

先ず、この条文は「産業上利用することができる発明をした者は、・・・その発明について特許を受けることができる。」と規定しています。これを文節すると、「発明」であること、「産業上利用することができる発明」であること、の二つの要件があることが分かります。そして、“「発明」であること”(以下、発明該当性という。)について、審査基準に考え方が示されております。審査基準は特許庁での審査が一定の基準に従って、公平妥当かつ効率的に行われるように用意された手引のような物であり、特許庁ホームページで公開されております。

 

ここで、審査基準に例示されている「発明」に該当しないものの類型を紹介します ↓

2.1 「発明」に該当しないものの類型

「発明」といえるためには、「自然法則を利用した技術的思想の創作」である必要がある。以下の(i)から(vi)までの類型に該当するものは、「自然法則を利用した技術的思想の創作」ではないから、「発明」に該当しない。 (i) 自然法則自体(2.1.1 参照)

(ii) 単なる発見であって創作でないもの(2.1.2 参照)

(iii) 自然法則に反するもの(2.1.3 参照)

(iv) 自然法則を利用していないもの(2.1.4 参照)

(v) 技術的思想でないもの(2.1.5 参照)

(vi) 発明の課題を解決するための手段は示されているものの、その手段によっては、課題を解決することが明らかに不可能なもの(2.1.6 参照)

 

そして、上記(iv)自然法則を利用していないものとして以下が例示されています ↓

例 5:遠隔地にいる対局者間で将棋を行う方法であって、自分の手番の際に自分の手をチャットシステムを用いて相手に伝達するステップと、対局者の手番の際に対局者の手をチャットシステムを用いて対局者から受け取るステップとを交互に繰り返すことを特徴とする方法

(説明)
チャットシステムという技術的手段を利用した部分があるが、全体としては、遠隔地にいる対局者との間で交互に手番を繰り返して将棋を行うという人為的な取決めのみを利用した方法にすぎないため、「発明」に該当しない。

 

一方、堀江氏の特許出願の請求項1は以下です ↓

【特許請求の範囲】

【請求項1】 インターネットに接続された閲覧者端末 と、 前記閲覧者端末を操作する閲覧者が指定した識別子に対応するファイルにアクセス不能の場合に、当該アクセス不能を示すエラー画面を当該閲覧者端末の端末画面上に表示するためのエラー情報を、当該閲覧者端末に配信するためのエラー表示手段と、前記エラー情報に基づいて前記端末画面上にエラー画面 が表示される際に、当該エラー画面上に広告を掲載する ための広告情報を、当該エラー情報に含まれるリンク情報に基づく要求に応じて当該閲覧者端末に配信するため の広告掲載手段と、を含むことを特徴とするインターネット広告システム。

 

上記審査基準に示される例を照らしてみると、堀江氏の発明においては、アクセス不能を示すエラー情報を画面に表示するとともに広告を端末画面上に表示するという技術的手段は利用しているが、それは人為的な取決めのみを使用した方法にすぎないため、同じく発明該当性を満たさないと判断されたのではないかと思料します。

 

以上はあくまで私の推察です。

 

おわりに

今回紹介した堀江氏の発明・アイデアは、特許出願された当時先進的であったのだとは思いますが、結局のところ、特許発明としては登録されませんでした。また、その理由の一つとしては、発明が特許法の保護対象ではないとして、発明該当性が否定されていたことも確認できました。

 

一方、堀江氏は、この特許出願を2000年3月12日に行い、同年の6月15日には審査請求しています。当時、審査請求を行える期間は出願日から7年(現在は3年)であり、期限の直前に審査請求を行う出願が多数ある中、彼(または彼の会社の知財部)は出願後のとても早い時期に審査請求を行っていると言えます。権利化意欲が高かった表れであり、当時から早期に発明を事業活用したい気持ちは人一倍大きかったのかも知れません。

 

特許を取ってもファーストエントリーできずに事業が失敗するケースもあると思います。少し前に堀江氏は「アイデアは重要じゃない、すぐやることが大事」と語っています ↓

www.bookbang.jp

 

彼の特許出願は2000年に行った2件のみ。それ以降の特許出願は見つかりません。そうした潔さのようなものにも彼のスタンスが良く表れているなと思った次第です。