前回の記事でビジネスモデル特許について触れましたが、今日はビジネスモデル特許で有名な歌手・野口五郎氏の発明を紹介します。前回の記事はこちら ↓
この方は歌手でありながら、ビジネスモデル特許を出願して、実際にそのビジネスを展開されております。2013年の日経の記事によれば、彼が開始したビジネスモデルは、ライブなどで来場者にQRコードが印刷されたカードを配布し、来場者はそれをスマホの専用ソフトで読み取れば、ライブ会場を一歩出た直後からライブ映像を視聴できるというサービスです。これにより、来場者はライブの帰り道などでライブの感動を呼び起こさせることができるので「テイクアウトライブ」などと表現されています ↓
www.nikkei.com
今年の1月には、同サービスがドリカムの全国ツアーにも導入されていることが報じられ、このビジネスモデル特許についてはいろいろと記事にされています。発明の内容が分かる記事も沢山ありますので、ここでは特に掘り下げませんが、興味がある方は是非ググってみてください。
私としては、野口五郎氏の他の発明が気になったので、今回もJ-PlatPatで特許検索してみました。そうすると合計7件の特許出願がヒットしたので中身をみました。願書に記載されている発明者・出願人は野口五郎ではなく、佐藤靖です。芸名では特許出願はできないため、もちろん本名が記載されています。
発明としては、「チケット販売システム」、「コンテンツ配信システム」、「決済システム」といった彼の芸能活動に関連するものが多かったです。ただ、1件だけ「3次元画像の印刷されたシール、およびシールの作成方法」という異質な発明がありましたので、ごく簡単に取り上げておきます。
請求項1は以下のようなものです ↓
【請求項1】
カメラ機能付き携帯端末で被写体を異なる角度から動画像として撮影するステップと、
撮影した動画像をサーバへ送信するステップと、
前記サーバが受信した動画像から2枚以上の静止画像を抽出するステップと、
抽出した静止画像に基づいて3次元画像(以下、「3D画像」)を作成するステップと、
シール台紙に作成した3D画像を印刷し、シート状レンズを印刷面の上に貼り付けるか、あるいはシート状レンズの裏面に3D画像を直接印刷するステップと、
を有することを特徴とする3D画像が印刷されたシールの作成方法。
図面を見ると流れが良く分かりますが、ざっくり言えば、カメラ付きケータイで動画撮影した被写体を3D画像にしてシールに印刷する方法のようです ↓
他の図面もみてみましょう。被写体のワンちゃんが可愛いですね。絵は野口五郎氏が自ら書かれたのでしょうか ↓
シール制作アプリを使って被写体の動画を送信するのですね。その際にシールの大きさや必要数を入力したりするのですね ↓
3D画像にはデコレーションができるのですね ↓
3D画像が印刷されたシールはこんな感じなのですね ↓
残念なことに、この特許出願は審査で拒絶査定を受けていましたが、野口五郎氏はいろいろと発明をされているのですね。こうした感覚でビジネスを創造し、中には上述のビジネスモデルのように成功している発明まで生み出している訳ですから、きっとこの感覚が大事なのですね。ちなみに、前記ビジネスモデル特許については特許第4859882号として特許権が成立しています。存続期間も2028年までありますので、彼は本業以外でもこの先の約10年、QRコードを利用した「テイクアウトライブ」を独占排他的にサービス提供できる権利を有していることになります。
ビジネスモデル特許の世界は、アイデアがあればそれを形にするだけ、なので、技術というよりも行動力の戦いのような気がしてなりません。