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【発明紹介-010】空飛ぶパンプキン

今月弁理士会から配布された冊子の中に、とてもおもしろい発明が紹介されていました。発明の名称の響きだけでも私は魅了されてしまい、思わずJ-PlatPatで調べてしまいました。

 

発明の名称はズバリ「カボチャの空中栽培法」。特許第2509148号、クレームは以下です(請求項1のみを引用) ↓

 【請求項1】  下記の第1工程ないし第8工程からなることを特徴とするカボチャの空中栽培法。
第1工程苗の定植場所については、ハウス状枠(1)に対して内側植または外側植にするかを決め、使用するハウス状枠(1)の間口規定サイズに対して、内側植ならマイナスで所定寸法、外側植ならプラスで所定寸法として畝幅を決め、株間も所定間隔とすること。
第2工程定植4~5週間後に、アーチ型に曲げた金属製パイプ(1A)を所定間隔で並列状態で地面に植設し、これら金属製パイプとは直交方向をもって左右のサイド直管パイプ(1B)を地面より所定寸法離して取付け、これら左右のサイド直管パイプ(1B)間には均等な間隔をもって3列の中間の直管パイプ(1C)を取付けること。
第3工程アーチ型に曲げた金属製パイプ(1A)の上にネット(2)を被せ、ネットの両サイドを左右のサイド直管パイプに紐(2B)で止める。
第4工程伸びた茎葉をネットの上に這わせ、地面に近い左右のサイド直管パイプに茎(3)を稲ワラなど適当な紐(4)で縛ること。
第5工程受粉時に幼果(3C)近くに位置する茎(3D)に幼果(3C)の表皮に触れても傷がつかないようカバー(3E)を装着すること。
第6工程肥大中期以後には葉面(3A)に、追肥として葉面散布すること。
第7工程カボチャの実(3B)が肥大に伴ってネットに触れてネットの糸の跡がカボチャの実に付かないように、触れる箇所ははさみ(6)でネットの糸を切断すること。
第8工程収穫作業は運搬具、運搬車(7)をハウス状枠内に搬入し、摘果し選別場に運ぶこと。

 

この技術、分かる人には分かるとは思いますが、発明の名称のとおり、カボチャの栽培~収穫に関するものです。難解に思える方のために、今回も例の如く図面を貼り付けておきますね ↓

f:id:omoro-invention:20181120214726p:plain

 

なんて事でしょう!! ビニールハウスの骨格にカボチャが吊り下げられて栽培されているではないですか!!

 

発明の効果は以下のように記載されています ↓

1.密植栽培による多収穫、商品価値の高まりによって多収入を図ることができる。すなわち、300坪当たり慣行法での定植株数は400~600株であるが、本発明の空中栽培法では800~1000株を定植することが可能である。
2.空中で成熟するので日光が充分当たり、黄緑色の部分ができず、しかも実が変形せず、食味、品質の良いカボチャができる。
3.ネットの上で茎葉が繁茂するので、通気性が良く、うどんこ病にかかりにくい。
4.空中に実がぶら下がっているので、熟果の判断が容易であり、摘果、適期を逃さず、ハウス状枠内に運搬具、運搬車を入れて収穫できるので、作業が容易であり、省力化につながる。また、慣行法での収穫時に問題となっている茎葉の傷みによる減収問題は起きない。

 

この発明の特許出願の審査経過を確認しましたが、審査では当初の請求項から補正はなく、無傷のまま特許査定されていました。請求項1には数多くの工程が示されておりますが、この全ての工程が取り入れられたカボチャの生産方法について、新規性・進歩性を否定する先行技術はさすがに無かったのですね。

 

一方、仮に第三者が、この方法でカボチャを生産し、そのカボチャが市場に出回ったとしても、権利者は請求項1に記載された全ての工程が取り入れられて生産されたカボチャであることを立証できなければ権利行使はできません。しかし、実際にこの特許技術で生産されたカボチャかどうかなんて、そのカボチャを見ただけでは誰も分からないのではないでしょうか。裏を返せば、このような発明は権利化が容易ですが、第三者による特許権侵害を把握することが困難なため、普通はノウハウとして秘匿されるものだと思われます。しかし、そこは敢えて特許出願したのですね。この点、この特許権者は、「空飛ぶパンプキン」という名称の商標登録もしています。商標権の存続期間は10年。しかし、商標権は特許権と異なり更新が可能です。つまり、商標登録されれば権利者は半永久的にその名称を独占使用することができるようになります。よって、特許権が切れたあとも商標権を活用することで、事業を良い形で保護できるということになります。この特許権は既に権利満了していますが、特許権者はそれまでの間に商標権も駆使して十分にこのカボチャの知名度を高めたのかもしれません。農業の世界でうまく知財を保護・活用している例かと思います。いわゆる知財ミックス戦略ですね。

 

実際、この特許権者は「北海道空飛ぶパンプキン生産組合」を設立して地域ブランドとしてもこのカボチャを生産・販売しておられます。少しググってみましたが、色んな記事がありました。

 

ちなみに、以下の記事によれば、「空飛ぶパンプキン」は、一玉(1.5キロ)とジャガイモ、タマネギ各3キロの詰め合わせで、4200円(税込み)だそうです(※2015年9月の記事のため現在の価格とは異なるかも知れません)。特許技術で生産されているにも関わらずこのお値段とは。お手頃ですね。私も一度購入してみたくなりました。

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