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【発明紹介-009】おもちの発明

今日紹介する発明は“お餅”です。私の知る限り、この発明は最も原始的と言えるかも知れません。また、この発明の特許権、ものすごい“威力”を発揮しています。

 

では、見ていきましょう。

 

技術を説明すると、切り餅(角餅)の周囲に切り込み(スリット)を入れるという超単純なもの。それだけ!! 特許の図面を見ても本当にカンタンな発明であることがわかります。

 

・特許第4111382号の図面 ↓

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発明の効果については、以下の記載があります。

【発明の効果】

 本発明は上述のように構成したから、切り込みの設定によって焼き途中での膨化による 噴き出しを制御できると共に、焼いた後の焼き餅の美感も損なわず実用化でき、しかも切り込みの設定によっては、焼き上がった餅が単にこの切り込みによって美感を損なわないだけでなく、逆に自動的に従来にない非常に食べ易く、また食欲をそそり、また現に美味しく食することができる画期的な焼き上がり形状となり、また今まで難しいとされていた焼き餅を容易に均一に焼くことができ餅の消費量を飛躍的に増大させることも期待できる極めて画期的な餅となる。

 

つまり、お餅を焼くと、ぷくーっと膨らみますが、このスリットがあることで、最中やサンドウイッチのように、中身がサンドされている状態となり、膨化による外部への噴き出しを防止できるというものです。お餅が均一に焼き上がるし、見た目も良し、なのです。

 

すごいですね。この切り込み一本でこんな効果を生み出すのですから。加えて、これを発明の効果として捉えて表現していることにも感服です。

 

さて、この発明の特許出願人・権利者は、業界2位の越後製菓です。同社は関連製品の製造販売をしています。一方、業界1位のサトウ食品も長年「サトウの切り餅」を製造販売しており、過去にはこの越後製菓の特許権を侵害しているとして争いになった事がありました(切り餅事件)。

 

特許権侵害訴訟の結果、特許権者である越後製菓の訴えが認められ、サトウ食品には約8億円の損害賠償金の支払いが命じられています。サトウ食品の切り餅を見ると、確かに側面にスリットが二本入っており、越後製菓の特許技術を利用していたことが分かります。

 

・「平成23年(ネ)第10002号 特許権侵害差止等請求控訴事件」判決に示されるサトウ食品の製品図面 ↓

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この裁判、発明がシンプルなだけに知財業界でもかなり話題になりました。

 

また、この特許権を取り巻く第2ラウンドの争いも起こりました。越後製菓はサトウ食品との争いで勝訴を勝ち取った後、今度は業界第3位のきむら食品も提訴しています。45億円の損害賠償請求です。きむら食品の切り餅の側面にも一本のスリットが入っていたからです。

 

そして、きむら食品はその後に倒産、民事再生法の適用を申請しています。更にこのあとの流れがすごいんです。なんと、サトウ食品はきむら食品の事業譲渡を受け、越後製菓から特許権侵害で訴えられた二社がグループ会社になったのです。

 

きむら食品の倒産に越後製菓の特許権侵害訴訟が直接影響していたかは定かではありませんが、上記のような非常に単純カンタンな発明に係る特許権が、切り餅業界を大きく揺さぶった事実は紛れも無い事実です。そうした単純な発明でも特許権になるという事実を示すとともに、特許権の怖さを思い知らされる良い事例なのではと思います。

 

私も特許研修などでは「ビジネスをするときには、しっかり特許調査しておくことが大事ですねぇ」などと言いながら、この事件を良くネタにさせてもらっています。

 

ちなみに、現在のサトウ食品ときむら食品(現うさぎもち)の切り餅の側面には、このスリットはもう入っていません。特許権侵害回避の対応ですね。