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【発明紹介-003】大仁田 厚 氏の発明

本日も「おもしろ発明」を紹介します。

 

今回の登場人物は元プロレスラー・大仁田厚氏。参議院議員として世間を騒がせていた時期もありましたが、何と言っても「ファイヤー!!」の雄叫び、そして「ノーロープ有刺鉄線電流爆破デスマッチ」や「有刺鉄線バリケードマット地雷爆破デスマッチ」などの流血系ファイトが彼の代名詞ですよね。彼のオフィシャル・サイトには「2017年10月31日に7年ぶり7度目の引退」と示されていましたが、最近のニュースによれば、今年10月28日に現役復帰されるみたいです。7回目の現役復帰。。何やら今度は「日本人初のボランティアレスラーとして」だそうです。

 

本題に戻すと、彼が1994年に実用新案登録出願しているものがあります。出願番号は実願平6-12083(出願日1994年9月29日)、考案の名称は「格闘技用リング」、内容は図面を見れば一目瞭然、彼が十八番としていた流血系ファイトを演出する装置に関するものだとすぐ分かります。黒色のモジャモジャは有刺鉄線です↓

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ここで、実用新案制度について少し触れておきます。特許制度と同様、保護対象は「自然法則を利用した技術的思想の創作」です。特許制度の保護対象がそのうち“高度”なものであるのに対し、実用新案制度ではこの高度性が求められません。ただ、特許制度では方法の発明も保護されますが、実用新案制度の保護対象が「物品の形状、構造又は組合せに係る考案」に限られる点で特許制度とは異なります。また、実用新案制度において出願があったときは、その実用新案の出願が必要事項の不記載などにより無効にされた場合を除き、実用新案権の設定の登録がされます。つまり、実用新案制度では、新規性や進歩性が審査されずに権利が付与されます(無審査主義)。従って、所謂小発明であっても容易に権利取得できますので、権利保有をアピールしたい場合などには、ある意味非常に便利な制度であります。

 

さて、内容を見ていきましょう。内容は至ってシンプル。プロレスなどの格闘技用リングの周囲に有刺鉄線が張り巡らされたベニア板を配置するというもの。また、レスラーが場外落下した時に爆発する小型爆発物をセットしたものなど、かなり過激です。

 

詳しくは明細書を読んだ方が早いので、以下に抄録として抜粋しておきます。まずは書誌事項。

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】登録実用新案公報(U)
(11)【登録番号】第3009589号
(24)【登録日】平成7年(1995)1月25日
(45)【発行日】平成7年(1995)4月4日
(54)【考案の名称】格闘技用リング
(51)【国際特許分類第6版】
   A63J  5/00                
   A63B 71/04  

(21)【出願番号】実願平6-12083
(22)【出願日】平成6年(1994)9月29日
(73)【実用新案権者】
【識別番号】594162009
【氏名又は名称】大仁田  厚
(72)【考案者】
【氏名】大仁田  厚
 

 

次に、詳細な説明からの抜粋。

【考案の詳細な説明】
【0001】
    【産業上の利用分野】
  本考案は、例えばプロレスリング(以下、プロレスと略す)に代表されるような格闘技のための特殊リングであって、特にそのショーアップ効果や迫力(スリル性)を従来よりも高めることが可能な格闘技用リングに関する。
【0002】
    【従来の技術】
  ボクシングやプロレスなどの格闘技用リングとしては、キャンバスの四方にコーナーマットを配し、コーナーマット同士を3~4本のロープで繋ぎ、さらにマット外側にリングポストを直立させたものが一般的であり、通常ボクサーやプロレスラーはこれらロープで囲まれたキャンバス上でファイトすることになる。
【0003】
  ところで、このような格闘技の中で、プロレスは、変則的なルールを採用している点(プロレス団体や試合によってルールが異なる場合がある)や、レスラー達が反則技を含む多彩な技を繰り出す点や、リング外での場外乱闘シーンが期待されているという点等から、他の格闘技よりもいわゆるショー・エンターティンメントとしての傾向が強い。
【0004】
  このため、使用されるリングも、上述した基本的なリングの他に、観客に対してより緊張感を高めるような特殊リングが使用されることがある。
  例えば、このような特殊リングとしては、リングの四方を金網フェンスで覆い、ここに小型爆発物や有刺鉄線を巻き付けたケージ型リング(FMW、大仁田厚対ターザン後藤戦で使用)や、コーナーマット間のロープに有刺鉄線を巻き付け、角材に灯油を染み込ませた布をまきつけたものをロープに取りつけ炎上させたリング(FMW、大仁田厚、ターザン後藤対ザ・シーク、サブゥー戦で使用)等がある。
【0005】
    【考案が解決しようとする課題】
  しかしながら、これまでの特殊リングは、上述したようにリングの構成要素に有刺鉄線や小型爆発物などを巻き付けたり、リング周囲を金網のフェンスで覆うような大掛かりな構造であるため、リングの設営、撤収作業のために、多くの作業員と長い作業時間を必要とし、人的費用や製造コストがかかるという問題があった。
【0006】
  1回のプロレス興行においては、通常、前座試合を含めて多数の試合が行われ、全ての試合にこのような特殊リングを用いることはまれであり、通常のリングを用いた試合も併せて行われることが多い。このため、これまでの特殊リングでは、通常のリングから特殊リングへの切換え作業に時間がかかり、特殊リングを用いたバラエティに富んだプロレス興行を簡単に行うことができないという問題があった。
【0007】
  本考案は、上述した従来の特殊リングの問題点に鑑み、設営・撤収が比較的簡単でかつ人的・物的コストが低く、しかも観客に対してこれまで同様、スリリングな試合展開を提供しうる、いわゆるショーエンターティンメント性に富む格闘技用リングを提供することを目的とする。
【0008】
    【課題を解決するための手段】
  上記目的は、キャンバスの各角部にコーナーマットを配し、前記コーナーマット間を複数のロープで繋ぐことにより、前記キャンバス上に前記ロープで囲まれた競技空間を画成するリング本体を有する格闘技用リングにおいて、前記リング本体を包囲する床面上に、第1の有刺鉄線を敷設したことを特徴とする格闘技用リングによって達成される。
【0009】
  上述した格闘技用リングにおいて、前記第1の有刺鉄線は、衝撃吸収部材を介して床面上に設置された板材上に張り巡らされていることが望ましい。
  上述した格闘技用リングにおいて、前記第1の有刺鉄線に、格闘技の演出効果を高めるための第1の爆発物が取り付けられていることが望ましい。
  上述した格闘技用リングにおいて、前記第1の爆発物は、格闘者の前記第1の有刺鉄線上への落下の衝撃により点火されることが望ましい。
【0010】
  上述した格闘技用リングにおいて、前記キャンバスの各角部に、第2の有刺鉄線が更に付設されていることが望ましい。
  上述した格闘技用リングにおいて、前記第2の有刺鉄線は、前記コーナーマットに近接して前記キャンバス上に立てられる板材上に張り巡らされていることが望ましい。
【0011】
  上述した格闘技用リングにおいて、前記第2の有刺鉄線に、格闘技の演出効果を高めるための第2の爆発物が取り付けられていることが望ましい。
  上述した格闘技用リングにおいて、前記第2の爆発物は、格闘者の前記第2の有刺鉄線上への衝突の衝撃により点火されることが望ましい。
【0012】
    【作用】
  本考案によれば、リング本体の構成要素に対し、有刺鉄線や小型爆発物を装着するのではなく、リング本体は通常のリングをそのまま用い、リング周囲の床面の上に、第1の有刺鉄線を敷設することとしたため、設営・撤収の際の作業が簡単であり、短時間で設営・撤収作業を行うことができる。また、リング周囲に有刺鉄線を配置することにより、ロープに有刺鉄線を巻き付けた特殊リングと同様、またはそれ以上のスリリングな試合展開を観客に提供できる。

・・・

 

ところで、詳細の説明の冒頭部分ではこの出願の背景などが記されています。段落【0004】などはファンにとってかなり読み応えがあるのでは。本来、従来技術との対比を行って権利を得ようとする考案の特徴を浮き彫りにする欄なのですが、大仁田厚氏のそれまでのプロレス興行が描かれており素直に面白いです。

 

また、特許や実用新案の出願をすると、国際特許分類というものが付与されます。付言すると特許文献は膨大な数が存在していますから、何らかの分類指標がないとその膨大な蓄積の中から求める文献を探し出すのは困難になります。そこで、特許調査の便宜を図るために技術毎の分類が作成され、特許庁の審査官を始め、知財関係者においては不可欠なものとなっています。

 

この出願に対して付与された国際特許分類は「A63J 5/00」と「A63B 71/04」というもの。「A63J 5/00」は「舞台上、サーカス試合場内で特殊な効果を出すための補助装置」となります。こんな技術分類があったのですね。私が普段触れている特許はバイオ関係なので、非常に新鮮なのです。

 

なお、実用新案権は出願から7年(現在は10年)で権利が満了します。平成12年に失効している権利なので、大仁田厚氏はもうこの「格闘技用リング」を独占して使用することはできないのです。

 

ですが、このタイミングで7度目の現役復帰、個人的には、また何か面白い発明や考案をしてくれるのではないかと期待してしまうのです。。