おもしろ発明ウェブログ

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【発明紹介-002】小室 哲哉 氏の発明

「おもしろ発明の紹介」の第二弾です。

 

前回に引き続き、題材はエンターテイメント関係でいきます。人物・発明者は小室哲哉氏です。

 

彼が日本を代表するミュージシャンであって、音楽プロデューサーであることは、皆さんご存知のこと。そんな彼ですが、マイケル・ジャクソン氏と同様、自ら完成させた発明を特許出願しています。発明の名称は「ミュージシャン及びダンサー用電子時計」。いかにも音楽関係という発明ですね。特許番号は特許第3307567号(出願番号は特願平9-239117)です。今日はこれを紹介したいと思います。

 

特許公報などは、特許庁に設置されている工業所有権情報・研修館(INPIT)が運営する特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)というデータベースにアクセスすることで無料で簡単に閲覧できます。細かい内容に興味がある方はトライしてみてください。

 

さて、この発明ですが、「発明が解決しようとする課題」は以下のように記載されています。

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 【発明が解決しようとする課題】

従って、演奏のダンスにあたってのメトロノームやリズムマシンを使用したいときは、これら又はこれらを備えた楽器を用意しなくてはならず、例えばこれらを備えていない場所で、その場の のりで演奏をしたりダンスをしたい場合や、一寸した時間を利用して演奏やダンスの練習を行いたい場合にはこれらを使用できない不便さがあった。

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と、思わず赤字で強調してしまいましたが、「のり」でダンスなどをしたい時に、リズムマシーンのようなものがなくて不便さがあっただなんて。。この課題の着眼は、やはりその世界にいる者だからこそ持てたのではないかと思います。

 

また、日本語表現辞典で「のり(ノリ)」を調べたところ、「その場の雰囲気に合わせて調子づくこと」と書かれていました。情緒的な表現に感じますが、こうした用語が特許の書類上でも使用されている点で、彼が彼の属する世界で「のり」で何かやってみることを大事にしている、という彼の価値観が伝わってきます。

 

彼はこの課題を解決しようとして今回の発明に至っています。彼が選択した解決手段は特許出願時の請求項に現れています。

【請求項1】    身体の任意箇所に装着される時計にして、所望のビート音を発するメトロノーム機能及び、所望のリズム演奏を行うリズムマシン機能を備えたミュージシャン及びダンサー用電子時計。

(請求項2以下は省略。)

 

図面も見るとよく分かりますが、ストップウォッチのような腕時計にメトロノームやリズムマシーンを合体させたような発明です↓

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ちなみに、出願人および発明者は共に小室哲哉氏のみでした。また、出願時の出願人住所はアメリカ合衆国となっていました。出願日は1997年8月21日であり、その頃、彼は映画スピード2のテーマ曲のリミックスを手掛けるなど、音楽プロデューサーとして世界展開を図っていた時期でしょう。

 

この特許出願の審査では、二度、拒絶理由通知書が出願人に通知されています。拒絶理由の内容としては、小室哲哉氏の発明の特許出願日前に同一発明が存在するといった理由が通知されておりました。この拒絶理由について少しだけ言及すると、特許制度においては、異なる日に同一の発明について特許出願がされた場合は最先の出願に係る発明に特許が付与されます(先願主義)。具体的には、以下の発明が小室哲哉氏の出願日前に存在していることが指摘されていました。

 

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小室哲哉氏は審査でそうした指摘を受け、請求項を次のように補正しました。

【請求項1】 身体の任意箇所に装着される時計にして、所望のビート音を発するメトロノーム機能及び、所望のリズム演奏を行うリズムマシン機能を備えると共にメトロノーム機能又はリズムマシン機能の実行時に、複数台の時計のビート音又はリズム音はリズムと同期可能としたミュージシャン及びダンサー用電子時計。

(下線は補正箇所。請求項2以下は省略。)

 

結果、この補正が認められて特許査定、2002年5月17日に特許権が成立しています。上記補正は、拒絶理由通知で引用された先行技術に対する新規性・進歩性を主張しうる構成として、電子時計の使用時に複数台の時計のビート音又はリズム音のリズムが同期している、という要素を付加しています。これは特許性の主張に効を奏したのみならず、実際の使用状況が、複数人のダンサーやパフォーマーからなるユニットであることを考えると的を得た形であり、うまく権利を取得されたなと思います。

 

以上、小室哲哉氏は音楽活動を続けるにあたり、特許制度を利用していたことが分かりました。音楽という才能に加えて、生み出したものについて、誰もまねできない状況を作ることにも意識が高いと言えます。マイケル・ジャクソン氏もそうでしたが、第一線の著名な音楽家でも、より優位な立場でパフォーマンスできることに貪欲なのだなと思いました。これが成功の秘訣なのかも知れません。

 

なお、今回紹介した彼の特許権の存続期間満了日は2017年8月21日であったところ、年金未納による抹消で2008年5月17日に権利消滅していました。その時期は彼の著作権が色々と話題になった時期だと思います。今年1月、彼は引退を表明されました。私は、TM NETWORK時代から彼の音楽を聞いています。彼の音楽が好きなので、また新しい楽曲を生み出してほしいです。